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『SEMPO -日本のシンドラー杉原千畝物語-』 4/16マチネ

2008.04.16 *Wed
sempo
吉川晃司さん主演のミュージカル『SEMPO-日本のシンドラー杉原千畝物語-』を観に新国立劇場へ行ってきました。先週の『李香蘭』に続いて今週もまた背景に戦争が絡んだミュージカル作品・・・色々と考えさせられることが多いです。ちなみにこの作品のタイトル『SEMPO』というのは杉原千畝さんの名前『千畝』を別読みしたものです。「ちうね」では呼びづらかった海外の人のために「せんぽ」という呼び名を使ったところからきています。

ロビーにはたくさんの著名人からの花があり、杉原千畝さんのことを綴った本なんかも発売されていました。そのなかになんと、この作品の台本が売られているコーナーを発見!キャラメルボックスが台本売っているのは見たことあるんですが(っていうか購入してたし 笑)、こういう普通のミュージカル作品で台本を発売しているのを見たのは初めてだったのでビックリ。しかも、特定の役者さんがサインを書いたものも何種類かというので二度びっくり(笑)。その中には吉川晃司さんのもあったらしいのですが、限定20冊で整理券が配られるほどの人気っぷり。私が見たときには既に売り切れてました。他には森奈みはるさん、井料瑠美さん、今拓哉さん、沢木順さん・・・あと3人くらいあったかな。でも洋平君のはなくて残念だったんですが…。でも、この台本グッズを私が買わないわけがないってことで沢木順さんのサイン入り台本を購入しました。イラスト入りですごく可愛いんですよ♪
ちなみにこの作品はDVD化が決まっているらしく、劇場で予約受付していました。洋平君が出てる作品という事で無条件に予約決定(笑)。さらに吉川晃司さんが歌う劇中歌もちょうど本日発売ということで開演前にはそれを買い求める行列が出来ておりました。とりあえず私は1幕見てから考えようと思っていたんですが・・・すごくいい歌だったので結局休憩時間に購入してしまった。まさか吉川晃司のCDを買う日が来るとは思わなかったよ(笑)。

さて、全体の感想ですが・・・多少ツッコミ入れたい部分もありはしたんですけど総体的にはとてもいい作品だと思いました。杉原千畝さんのことはドキュメンタリーや数年前やっていた反町さん主演のドラマを見て知っていたのでストーリーもすっと頭に入ってきたし、音楽もとてもよかったです。中島みゆきさんが楽曲を提供していることでも話題に上っていますが、みゆきさんが提供したのは6曲だけだったんですね(汗)。1幕クライマックスの曲は吉川さんの書き下ろし、他はピーター・ヤーリンさんという方が書いてます。どれもいい曲ばかりだったのですが、みゆきさんの書き下ろした曲はやっぱりスケールが大きくて心に響きますね。特に「NOW」と「翼を上げて」という曲がすごくよかった。今後もオリジナルミュージカルに楽曲提供してほしいなと思ってしまいました。

主なキャスト
杉原千畝:吉川晃司、杉原幸子:森奈みはる、節子:辛島小恵、グッシェ:田村雄一、トニー/ノエル:今拓哉、ビル/ニシュリ:泉見洋平、カイム:沢木順、エバ:彩輝なお、エリーゼ:井料瑠美、ガノール/ヒトラー:川本昭彦、ベイブ/フランツ/コレオ:宇都宮直高


以下、ネタバレを含んだ感想になります。ご注意ください。









杉原千畝さんは、ヒトラー台頭によりユダヤ人が迫害を受けた時代フィンランドからリトアニア領事代理として赴任した折、苦悩の果てに日本政府の意に反してポーランドから逃れてきたユダヤ人にビザを発給することで多くの命を救ったとされる人です。この偉大なことを成し遂げたにもかかわらず、日本政府に逆らった人としてつい最近まで歴史の表舞台に名前が出ることもありませんでした。なので、知らない人も多いと思います。名誉を回復されたのが千畝さんが亡くなってから6年後の1992年だというのがなんだか信じられません。それほど戦争というのは愚かなことなんだと改めて思い知らされたような気がしました。

まず舞台全体に関してツッコミ入れたいところから(苦笑)。
新国立劇場という大きな舞台でやっているのにあまりにもスペースの使い方がこじんまりしすぎてるのが気になりました。セットが舞台中央の回り舞台だけだったのでなんだか全体的に殺風景なんですよ。他のスペースはあまり活用されてなくてほとんどがこの回り舞台の上だけでドラマ展開させていくような感じ。しかも、今回上手寄りに座っていたからか回り舞台を一生懸命回しているスタッフさんとかが丸見え状態になってた(爆)。あれはちょっとマズイだろう・・・。なんであんな狭い範囲だけで芝居を進める形式を取っていたんだろう・・・。ものすごく勿体ない!スケールの大きなストーリーのはずなのに、あの舞台演出のせいでなんだか小さく見えてしまいました。今回演出を担当したのは舞台俳優でもある大谷美智浩さん。TSの舞台では補助みたいな形で何度か演出していますが、今回初めて単独演出した舞台を見させてもらいました。うーーん、もう少し舞台全体のバランスを考えてほしかったかも。
それから1幕に出てくる戦争背景説明シーン。日本・ドイツ・ソ連の複雑な関係を女性アンサンブルがセクシーに演じていたんですが・・・まぁ、ああいう方法も斬新でいいかなとは思ったんですが・・・正直今回の舞台の雰囲気とマッチしてなくて浮いてるんですよ(苦笑)。なんか色が違う。あとヒトラーを皮肉った2幕冒頭のシーンもちょっと違和感あったかなぁ。もう少しこのストーリーに同化できるような演出方法はなかったんだろうか・・・。
それともうひとつ、1幕のテンポがちょっと悪いですね。戦争背景説明に多くの時間を割いているために主役の杉原千畝さんがほとんど出てこない。主役が出てくるまで約20分から30分くらいかかってましたし(苦笑)・・・吉川さん目当てに観に来ていたお客さんはちょっと違和感覚えたのでは。戦争を扱った作品って人物に光を当てるまでに時間かかるんですよね。これは『李香蘭』でも同じことが言えるんですけど(苦笑)。

と・・・色々ツッコミ入れてしまいましたが(汗)・・・それ以外はとてもよかったです。特に第2幕は千畝の苦悩から決断までがじっくり描かれていて気がつけばボロボロ涙が零れていた状態に。日々大使館前に膨れ上がっていく助けを求めるユダヤ人を目の当たりにし、なんとか助けたい・・・でも外交官という立場上、日本政府に逆らうこともできない・・・そんなジレンマに苦しめられる千畝。当時日本はドイツと同盟を結んでいましたから、ドイツからの迫害を受けていたユダヤ人を助けるということは日本政府を裏切る行為とされていたんですよね。このあたりの心の葛藤がよく描かれていたので、妻・幸子の「あなたの思う通りに」と言う言葉でユダヤ人救済を決意するシーンがとても感動的でした。

「誰もこんなバカなことはやるまいね・・・。でも私たちはやろうか」

この言葉がものすごく印象的でした。言い方はとても穏やかなんだけど、その言葉の中には千畝のものすごい熱い想いが感じられて思わず目がウルウルしてしまった。それに何があっても覚悟はできているという奥さんの心強い言葉も胸に響くものがありましたね。あの家族に支えられたから千畝さんはビザ発給という決断をすることができたんだろうな・・・。

ビザの発給が決まったことをユダヤ人の人たちに伝えると彼らは涙を流して千畝に感謝します。「我々は日本政府に感謝します」という言葉がなんとも複雑な響きに聞こえてしまった…。日本政府はこのことについて了承していないわけであくまでも杉原千畝個人の「助けたい」という想いからのみの行動だったわけですから・・・。哀しいことに当時はユダヤ人の人たちに感謝されるような日本ではなかったですからね。
必死にビザを書き続ける千畝。自分の身体よりもユダヤ人を救いたいという一心から寝る間も惜しんでビザを書き続ける姿は涙なくしては見れません。あまりにペンを走らせすぎて手からペンが離れなくなったというエピソードも、それを見かねたユダヤ人が書く手間を省くようにとゴム印を作成してくれたこともちゃんと描かれてましたね。さらに感動したのは監視役として千畝の秘書をしていたゲシュタポのグシェが千畝の行動についに心動かされて彼に協力したシーンです。ドイツ側の彼からしたらユダヤ人を救う手助けをすることは考えられない出来事のはず。それなのにグシェは千畝の熱い想いに胸打たれてしまったんですよね。必死にペンを走らせる千畝の手を取り上げてその部分にユダヤ人が作成してくれたゴム印を押す場面は本当に泣けました。

ソ連軍から強制退去を申し付けられ領事館を去ることになっても、国を離れるギリギリの時間まで汽車のホームでユダヤ人のためにビザを書き続ける千畝。一番最後にノエルを呼んで家族ビザを発給してやるシーンも涙なくしては見れなかった・・・。ノエルは国に残してきた恋人がいましたが正式には婚姻関係を結んでいないのではじめは家族ビザを発給することを拒まれていたんですよね。正義感溢れる千畝ではありましたが、法に触れることはしないという律儀な人でもあった。それが、最後に「助けたい」という一心だけでノエルに家族ビザを発給してあげたんです。法律を守ることよりも、救いたいという気持ちのほうが大きくなっていったんでしょうね・・・。「もう書くことができない」と言いながら汽車で去っていく千畝に

「私たちはあなたを忘れません!もう一度あなたにお会いしますよ!必ず!!」

と泣きながら叫んでいるニシュリの言葉には涙が止まらなかった…。最後の最後までユダヤ人のためにビザを発給し続けた千畝。後年、カイムが千畝を想いながら「あの当時を知っている者たちは何も言わずに静かに想い返すだけだ」と語っていた言葉がとても印象的でした。

キャストの皆さんの熱演もとにかく素晴らしかった。印象的だった役者さんたちについて少々。

主演の吉川晃司さん、キャストが決定したときは正直「この作品に吉川さんって大丈夫?」と思ってしまったのですがどうしてどうして!じっくりと真摯に杉原千畝を演じてくれてとても感動させられましたよ。「ファントム」を見たときに大沢たかおさんに驚かされたのと似たような感覚だった。1幕最後のビッグナンバー「光と影」を歌うシーンはちょっと“吉川晃司風味”と感じてしまいましたが(笑)、それ以外は吉川節の歌い方を封印してしっかりとしたミュージカルナンバーを聞かせてくれました。ビザを発給し続ける演技や汽車で去っていくときの演技などもとても感動的だったし・・・吉川さんも舞台に向いているんじゃないだろうか。これからも機会があればチャレンジしてほしいと思います。

病の為に降板してしまった愛華さんの代役として幸子を演じた森奈みはるさんは明るく気丈な妻を好演してました。歌声もきれいだったし、こんな奥さんだったから千畝も決断できたんだろうなというのが納得できる演技でした。愛華さんの幸子も見てみたかったけれど・・・本当に今はゆっくりと体調回復のために治療に専念していただきたいと思います。

エバの母親エリーゼを演じた井料瑠美さん、彩輝さんの母親役ってどんな感じなんだろうと最初思っていたんですが(笑)、これが意外と違和感なくてちょっとビックリしました。優しく柔らかい母親のオーラがしっかり出てましたよ。それに井料さんの歌声が本当に素晴らしかった!エバとの別れのシーンは思わず涙してしまいましたし…。でも、冒頭登場したときは思わず『JCS』のマリアかと思ってしまった・・・!作品間違えたかなと(笑)。

カイムを演じた沢木順さん、決して出番は多いわけではないのですが登場してくると舞台がビシッと締まる感じ。戦後、杉原千畝を想いながら語るシーンが特に印象的です。深い深い千畝への溢れんばかりの感謝の気持ちがビリビリとこちらに伝わってきて思わず涙・・・。さすがです。久しぶりに沢木さんの演技を見ましたけどやっぱりいいですね〜。素晴らしいです。カーテンコールでの明るいアクションをするオチャメな沢木さんも好きですけどね(笑)。

そして今回最大のお目当てだったニシュリ役の泉見洋平君。洋平くんも出番は多くないんですがユダヤ人代表としてキーとなるセリフを何度か言うシーンがあってそれがすごく嬉しかったですね。特にビザ発給が決まったあと千畝に「あなたの名前を忘れることはないでしょう」と言ったり(目が本当にキラッキラ輝いてる!)、去っていく千畝に「もう一度あなたにお会いしますよ!」と叫んだり・・・胸に響くセリフがいくつかありました。特に汽車で去っていく千畝に泣きながら叫んでいるシーンは思わずこちらも落涙しちゃったなぁ。感情が高ぶって涙声になっている洋平君の熱演が本当に素晴らしかった。
欲を言えばもう少し出番増やしてほしかったかも・・・。沢木さんにしても洋平君にしても、なんか使い方が少し勿体ない。それでもピンポイントでもこうやって印象的な芝居と歌を魅せてくれるわけだからすごいよなぁ。

他にも今拓哉さん田村雄一さん宇都宮直高さん川本昭彦さん辛島小恵さん彩輝なおさん・・・と、熱のこもった素晴らしい演技にたくさん感動をもらいました。そういえばこの舞台、元四季・元宝塚・TSミュージカル常連さんといった実力派揃いの役者さんが勢揃いしているんですよね。贅沢な舞台だった。4月末にはDVDも届くらしいので楽しみです。



うしばな
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