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千秋楽も間近に迫った『ベッジ・パードン』の2回目を観に行ってきました!
今回も劇場は大盛況で立ち見のお客さんもたくさんいらっしゃいました。この日は前回よりも後ろのほうの席でちょっと見切れるシーンもあったのですが(汗)全体を見渡せたのでよかったです。パブリック劇場は比較的コンパクトな作りなので後ろのほうでもけっこうよく見えるんですよね。

ロビーで販売されていたパンフレットは売り上げ金額の全てを東日本大震災の義援金に充てるそうです。観客数も見込めて余裕のある演劇公演では、こういう試みはいいと思いますね。色々な形で長期的に支援していきたいです。

三谷作品で、しかもキャストが粒揃いということで最初はチケットを取れるかどうかすら不安だったのですが・・・こうして2度観に行けた事は本当にラッキーでした。前回は後援会絡みでしたが、今回は先行参戦でしたからね(汗)。諦め半分でエントリーしたものが珍しく引っかかったのでw、例えどんな席であれ行けることは本当に嬉しかったです。
約1ヶ月ぶりの『ベッジ~』でしたが、前回とはまた違った感動があって本当にいい観劇ができました。結末を知っている上で観ると…なんだかちょっと泣けますね、この話。登場人物たちの細かい心の動きみたいなものを察知してしまって・・・ところどころで涙してしまいました。

全体的にはコメディーだけど、実はそれ以上にかなり深い物語だと思います。登場人物たちの心の動きを実に繊細に描いています。笑えるんだけど、その時々で心にグッとくるようなそんなセリフがいくつも出てくる。
さらにはいくつか巻き散らかした伏線が徐々に回収されていくくだりの爽快感。あの時のシーンはこんなところに繋がるのか、みたいな。それが笑えたり泣けたり…。様々な人間の感情が笑いのなかにもしっかりと盛り込まれているように思いました。観れば観るほど深みが増してくるのかもしれません。三谷さん、ほんとうに良い作品を書かれたなぁ~。


出演者
夏目金之助:野村萬斎、アニー・ペリン:深津絵里、畑中惣太郎:大泉洋、グリムズビー:浦井健治浅野和之

※1回目の観劇感想はこちら


以下、ネタバレを含んだ感想になります。



夏目金之助(のちの漱石)は妻子を日本に置いて単身イギリス留学している。以前住んでいたアパートを出てようやく新しい居候先を見つけた金之助。そこにはもう一人の日本人・畑中惣太郎が居候していますが、彼は頑として日本語を話そうとしない。必死に英語に慣れようとする金之助だったものの、自分よりも英語が流暢な惣太郎やブレッド一家の前では萎縮してしまいなかなか自然に接することができない。
そんな彼が唯一普通に言葉を交わせることができたのが使用人のアニー・ペリン。彼女はロンドンの下町育ちでコックニー訛りが酷く「H」の音をうまく発音できない。しかし彼女はハロルド夫人に厳しく窘められても惣太郎にバカにされても明るく前向きに仕事をこなしている。金之助は次第にそんな彼女に心惹かれていく。
しかし、あるとき金之助のもとに英語教師の知り合いだと言う牧師婦人が訪ねてきた。彼らは好奇の眼差しで金之助を見渡しバカにしたように笑っていた。機転を利かせた惣太郎のおかげで彼らはその場を後にしたものの、金之助は自分の居場所を見つけられずに深い苦悩に陥ってしまう。そんな彼を励まそうとアニーは夢の話をしようとするものの金之助はそれを拒絶。「夢の話ができなくなったら自分ではなくなってしまう」と涙するアニーを見た金之助は彼女の孤独と自らの孤独を重ね合わせ抱きしめる。

その後、金之助とアニーは付き合うようになっていたが・・・金之助はまだ自分が妻子持ちだということを彼女に告白できずにいた。しかし、いくら妻に手紙を送っても一向に返事が返ってこなかったことから金之助の心はアニーへとますますのめりこんでいく。
後日、ブレッド一家が飼っていた犬のミスター・ジャックが死んだことをきっかけに主人のハロルドが家を出てしまう。そのことが原因で借家だった家を手放さざるをえなくなった夫人は住人達にこの場所を出て行くように通達する。金之助はアニーと共に暮らす決意をするが、そこへアニーの弟のグリムズビーが駆け込んでくる。これまでも数々のトラブルを巻き起こしてきた彼だったが、とうとう借金の額が膨らみすぎて命を狙われる事態になったという。その対策として、姉を犯罪仲間だった弾丸ロスに売ることしか道がなくなったと告白しにくるが金之助は激しくそれを拒絶する。弟への想いはあれどもアニーも今回ばかりは掴み掛けた幸せを手放したくなかった。

そんな最中、引越し準備をしていた惣太郎の荷物からいくつかの手紙が発見される…。

前半から後半はコメディ的要素が強かった物語が、後半に入って一気にシリアスモードになります。特に惣太郎の意外な本心が明かされた後の展開は切なかったですね…。これは1回目よりも2回目に見た時のほうが胸にグサっとくるものがあったかも。


印象的なシーンをいくつか。


金之助がなんとかして日本語を話してもらおうと惣太郎に掛け合うシーン。押し問答になったところで金之助が舞台奥に向かって合図を送ると急に二人にスポットライトが当り
「ここからは日本語のセリフを日本語でお送りします」
という舞台アナウンスが流れるんですよね(笑)。
この手法は一番冒頭のシーンでも用いられてて、この時は最初は英語で話していたハロルドと金之助のところでアナウンスが入って「英語のセリフを日本語でお送りします」ってことになってストーリーが進んでいく。このあたりのちょっとリアリティを見せているところが面白いなぁって。
で、惣太郎の日本語が初めて披露されるわけですが・・・彼の口から飛び出してきたのは英語のような標準語ではなくてバリバリの秋田弁。この切り替わりが面白い。洋ちゃんの絶妙なセリフの間がいいんですよね~。惣太郎はなぜ日本語を話すことをあれだけ頑なに拒絶していたのかみんな納得してしまうわけです。

でもこのシーン、笑えるけれども切ない一面も持ってる。
惣太郎は方言がもとで日本ではバカにされ続けてきたわけで、そのコンプレックスがあるからこそ英語習得に並々ならぬ執念を燃やしていた。方言で苦い想いをしてきただけに、その頃の自分を捨ててイギリスでやり直したいという強い気持ちがなんだかちょっと痛々しくて泣けます。イギリスで生活するということは惣太郎にとって新たな人生の第一歩だったのかもしれないなと思いました。


それから、アニーと金之助とのやりとり。やっぱり最初の「君とはうまく話せる気がする」っていう彼の言葉に「それは私を下に見ているからだ」って返すアニーのセリフは胸の奥にグサッとくるものを感じました。
あのシーン、観ていた人は金之助と同じような気持ちにさせられてしまうんじゃないかな。そのことをアッケラカンとさも当たり前のようにカラカラ笑いながらアニーは語るわけで…上下関係の厳しかった当時のイギリス社会が見えたような気がしました。

さらに差別といった壁に金之助がぶつかり声を荒げてしまうシーンも切なかったなぁ。好奇の眼差しで見られ自分の居場所が見当たらないことを思い知らされた金之助が絶望に打ちひしがれ肩を震わせて涙するのですが・・・この後姿がなんとも痛々しくて見ているこちらも泣けてくる(涙)。そんな彼を励まそうと大好きな夢の話で盛り立てようとするアニーに対しても「夢の話はたくさんだ」と拒絶してしまう金之助。
するとその言葉にアニーは「夢の話をするな、なんて言わないで」と肩を震わせて涙する。アニーが時々に語る夢の話は、実は彼女自身が見つけた居場所だったんですよね。常に下に見られ厳しい言葉を浴びせられてきたアニーは「夢」を語ることで自らの存在感を確認していたのかもしれない。それを拒絶されたら彼女は居場所を失ってしまうわけで…そんな気持ちを考えたら切なくて切なくて…もう見ていて涙が(涙)。
「君は・・・私だ・・・!」
金之助はアニーと自分が居場所を求めて彷徨う同志のように思えたのだろうなぁ。泣きじゃくるアニーを抱きしめる金之助の仕草が温かくて優しくて、それでいて心細そうで切なくて…なんだか色んな感情が見え隠れした。


アニーのお騒がせな弟・グリムズビーが絡んでくるシーンはとにかくドタバタ続きで面白かったです。
特に惣太郎とグリムズビーの噛み合わないやり取りが何とも滑稽で笑いました。あのプレゼント交換シーンは惣太郎にとっては災難としかいいようがないな(笑)。ワニの指もらってもそりゃ嬉しくないよ(笑)。でも惣太郎の包んだプレゼントも"現金"っていうのがなんとも夢がないというか(笑)。
それから弾丸ロスとの悪巧みシーンでのドタバタ劇はこの物語のなかで一番スピーディーで笑えるところ。ここの見どころ何と言っても浅野さんの早替えでしょう!お見事と言うしかないです、あれは(笑)。

弾丸ロスとのシーンの時に小ネタがいくつかあって。
グリムズビーとロスがアニーの作った味噌汁もどきを「美味しい」と飲んでるのも面白かったなぁ。アニーが日本人の金之助のために味噌汁に似た飲み物を作るのですが…赤味噌色はチョコレートで色を出して豆腐はサイコロで雰囲気作りになってる(笑)。最初にこれを飲まされた金之助と惣太郎は大混乱しちゃうわけですが、「ダシをとったのがむしろ余計だった」と嘆く惣太郎のセリフに爆笑。これをあの二人は美味しいって言うわけですから、味覚関係がねぇ・・・みたいな(笑)。ちなみにチョコレートを使ったのはマイ・フェア・レディに出てくる、この芝居でも何度もかかってる「Wouldn't it Be Loverly?」の歌詞と引っ掛けたんだと思います
それから、弾丸ロスに両手を縛られてしまう惣太郎のシーンも面白かったな。このシーンになる前にグリムズビーが縄抜けの方法を得意げに話していたんですが、惣太郎はそれをまともに聞いてなかった。なので、いざ自分がその立場になった時に「あの時もっと真面目に聞いておけばよかった」と後悔するわけで(笑)。洋ちゃんのセリフの間が本当に最高に面白かった。


ドタバタ劇の後、ハロルドさんが家出して夫人が住人たちに今晩中に荷物をまとめるよう言いに来るシーンも印象的です。ハロルドさんんはいつも夫人にガミガミ怒鳴られてばかりでストレスをためていました。ビクトリア女王が亡くなられた日にも仕事に行けと叱責されていたり…彼にとってはもう限界だったのかもしれない。
しかし夫人はそんなダンナの気持ちを理解することができなかった。家出をされて「厳しい言葉も全て愛だったのに」と語るわけですが、その言葉に対して金之助は「気持ちは言葉にしなければ伝わらないものだ」と諭す。言葉にしなくても気持ちは伝わると思っているのは自分自身だけかもしれないっていう一種の警告でもありますよね。このセリフ聞いた時、ふと、三谷さんの私生活のことが過ぎってしまった(苦笑)。実際はどうだか分かりませんけどね…。
そんな夫人は、最後にアニーに対して感謝の気持ちを言葉にします。金之助に諭されたからというのもありましたが、初めて「よく頑張りましたね」という言葉をかけてもらったアニーは心底嬉しかったに違いないだろうな。そう思ったらなんだかジーンときました。


金之助はアニーと生きていくのを決めた矢先、思わぬ裏切りを知ってしまう。ここは切ないんだよなぁ。
ずっと金之助のことを助けてくれていたように見えた惣太郎でしたが、ある瞬間を機に金之助に猛烈なコンプレックスを感じるようになっていた。その理由というのが、一見とても滑稽な出来事のように思えるので客席は爆笑するわけですが・・・2度目に見るとこのシーンはあまり笑えるところではないなというように感じられました。
惣太郎は「なんでそんなことくらいで?」って第三者からは思えるような出来事で金之助を恨みに思ってしまうわけですが、彼自身からするとものすごく深刻な出来事なんです。もともとコンプレックスを持ってイギリスに渡り、必死に彼らの社会に馴染もうと独学で努力した惣太郎だからこそ感じた敗北感。金之助は無意識のうちにそれを彼に与えてしまった。
いくら流暢な英語を話せても「イギリス人」の一員になれないことをいつも痛切に感じていただけに、あの瞬間の金之助の言葉は本当にショックだったのかもしれない。その気持ちがなんだか痛いほど分かるんですよ。現に、冒頭のそのシーンをよく見ていると、惣太郎は不自然なくらいにものすごいショックを受けた仕草をしていました。この時の本当の気持ちを知らずにあれを見るとかなり笑えますが(笑)、知った上で見るとなんだかとても痛々しく映ります…。

惣太郎の裏切りを知ってしまった金之助。そんな彼がすがったのは、一緒に暮らしていこうと決めたアニーではなく・・・惣太郎が隠し持っていた手紙だった。アニーは金之助の真実をここで思い知らされることになるわけですが、その気持ちを表に出さないまま、そっと静かに身を引き…弟のために生きることを決意します(涙)。
悲しみの気持ちを押し隠して、弟に抱きしめられながら寂しい笑顔で外を眺めるアニーの表情がものすごく泣けました(涙)。そしてアニーのことを知らずに一心不乱に手紙を読み耽り、感激のあまり涙を流す金之助の姿もものすごくグッときて涙が出た…。アニーのことを思えば金之助の行動は残酷ではあるんだけど…でも、あの手紙を大事そうに抱きしめたりする仕草を見たら、なんか責められないなって…。


この事件のあと、引き続きハロルドの貸家に住んでいた金之助でしたが・・・すっかり人間不信になり引きこもり生活に入ってしまった。実際に夏目漱石もイギリス留学時代に精神的におかしくなったという記録があるそうですが、うまくそこの展開につなげたなぁと思いました。
惣太郎の裏切り、アニーへの自らの裏切りに金之助はすっかり参ってしまっている。そんな彼の前に、かつてと同じ元気な声を響かせてアニーがやってくる。弱音を吐き続ける金之助に、彼女は「今度はあなたが夢を語って」と背中を押して部屋を出て行きます。アニーは金之助に自らの将来を託したのかなって思いました…。"夢"のなかでアニーに背中を押された金之助は再び前を向くべく机に向かう。このシーンがものすごく印象的で…それにかぶさるように「Wouldn't it Be Loverly?」の音楽も流れてきて涙があふれてしまいました(涙)。ラストシーンの金之助の表情はドキリとするほど"夏目漱石"に重なりましたね。
なんか、当分はマイ・フェア・レディ見たらこの芝居思い出して泣きそうな気がする…。


金之助@野村萬斎さん
超個性的な面々が出てくる今回の芝居の中で、萬斎さんが演じる金之助はそんな彼らに翻弄されることが多い。あまり表立って自らの感情を出すこともなく、他のキャラクターの芝居を受けている印象がとても強いです。その受け方が、萬斎さん、絶妙なんですよ!!派手なキャラクターではないのであの濃いメンバーに混じると埋もれてしまいかねない金之助を、ものの見事に浮き上がらせている。前回もそれは感じたけど、今回も強く思いましたね。
アニーへの接し方がとにかく柔らかくて優しくて素晴らしい!特に1幕ラストで「君は私だ」と抱きしめるシーンはアニーが心底羨ましいと思ってしまった(爆)。それから、手紙を読むシーンもよかったなぁ。本当に心底待ちわびていたんだろうなって思えて…アニーのことを忘れてしまうくらい没頭してギュッと手紙を胸のところに押し当てて泣く芝居は見ているこちらもグッときてしまいました(涙)。
引きこもり生活に入り、生気を失ってしまった金之助もすごくリアル。今にも自殺しそうな表情で惣太郎を責めるシーンとか印象的だったな。そんな彼が、夢の中でアニーの声を聞いてから変わるところ。これものすごく難しい芝居だったと思うんですが…それがとても自然で!呆然としつつも次第に現実を見据え、シャンと背筋が伸びる。そして弾かれたように机に向かい新たな一歩を踏み出した金之助の後姿は本当に感動的で涙が出ました。ラストシーンで見せた頬杖をつく仕草と表情は、金之助ではなく"夏目漱石"そのもの。あの表情は萬斎さんだから出せるんじゃないかなぁと。
浅野さんと絡むドタバタシーンは面白かったです!萬斎さん、前回観た時よりも浅野さんの芝居に素で笑っちゃうことが多かったようなww!?ケイトに襲われるシーンはエスカレートしてて思わず笑いが漏れてて大変なことになってたし(笑)弾丸ロスに絡まれるシーンも明らかに前回よりパワーアップしてて顔を後ろに背けながら必死に素で笑うのを堪えようとしてました(笑)。
本当にいろんな意味で本当に面白かった!萬斎さんの夏目金之助はとにかくものすごく魅力的でした!!

アニー@深津絵里さん
1回目に観た時は登場してからしばらくアニーが深津さんであることが分からなかった私(爆)。流石に今回はちゃんと認識していましたが、そう思わせてしまうほど深津さんであることを消しているようなアニーで素晴らしかったです。
マイフェアレディのイライザのようにアニーもがなり声のような感じで終始喋り続けるのでかなり喉とか大変だったんじゃないかなぁと思います。それにコックニー訛りもありますからねぇ。イライザは矯正されて最後はきれいに喋れるようになるけど、アニーはずっと訛りのままで終いには金之助にまでその癖を移してしまうわけですから(笑)そういった台詞回しといった面でも苦労したんじゃないかなと思いました。
が、そんなことを微塵も感じさせないあの自然さ!喜怒哀楽の出し方が本当にキュートで彼女が不幸な境遇にいるということなんかほとんど感じさせない。金之助が一緒に暮らしたいと思ってしまうまでになるのが納得の可愛いアニー・ペリンでした。「私は頭は悪いけどバカじゃない」ってセリフがなんだかすごく印象的だったな。
「ベッジ」というあだ名をつけたのは金之助だったけど、それが悪気からではないことをアニーはちゃんと知っていて心から彼を慕っているわけで…その一途な想いがとても繊細にうまく演じられていたと思います。
愛する金之助が自分から離れていくことを感じ、違う道を選んでしまう時のアニーの笑顔が本当に何ともいえなく切なくて泣けたなぁ(涙)。可愛くて切ない素敵なアニーでした。

惣太郎@大泉洋くん
前々から洋ちゃんは三谷作品に合うんじゃないかなと思っていたのですが、本当にものの見事に馴染んでたので嬉しくなってしまいました。惣太郎というキャラクターのドタバタさはまるで当て書きされたのではないかと思えるほど。三谷さんが“こういうキャラクターでいてほしい”って思っていたことを洋ちゃんは見事に体現したのではないかなと。
金之助に対しては常にちょっと上から目線で必死に彼の上を行こうとあがいている惣太郎。なんかいつも偉そうなんだけど、ちょっとどこか不安げで…そんな心の揺れみたいな部分を面白おかしく実にうまく表現していたと思います。特にツッコミのセリフをいう時の間が最高に巧い!展開のスピーディーさにも見事に対応していて、ちょっとした仕草やセリフが生きてきて見ているこちらはついつい笑ってしまう。
そんな惣太郎が、本気で金之助を庇うシーンがあるのですがここがとても印象的だった。好奇の目で見つめられて珍しく感情を爆発させそうな金之助を押さえ、自らが前に進み出て「用がないならさっさと帰れ」と毅然と言い放つ。その時の惣太郎はなんだかとっても頼もしく大きく見えました。ついさっきまでオチャラケていた惣太郎が、ガラリと雰囲気を変える瞬間。ここの切り替え具合がたまらなく良かった!!このあたりの緩急のつけ方が本当に洋ちゃんは実に巧いと思う。
そしてあの裏切りの告白シーン。その理由に観客は思わず笑ってしまうわけですが、惣太郎本人からすればものすごい重大事項なわけでこれまでの鬱憤を爆発させるんですよね。その叫びに、次第に客席は飲まれていって…そして彼の心情に共感していきます。惣太郎の心に抱えた闇をすごくうまく表現してたと思う。
ラストシーン、イギリス紳士の格好で再び登場してきた洋ちゃんはとてもかっこよく輝いて見えました。やっぱり芝居をしている時の大泉洋はいい!!NACSの芝居やテレビ・映画での芝居も大好きだけど、これからは時々こうして外部の芝居にも出演してほしいなと思いました。

グリムズビー@浦井健治くん
この前観た時よりも馴染んでるなって思えてよかったです。変にがんばっているテンションが浮いて見えてしまったこともあったのですが、今回はうまく周りと空気をあわせてきたように思います。それにしてもあの髪型はすごいですねぇ(笑)。大爆発状態ですよww。
プレゼント交換するときのグリムズビーが一番面白い。惣太郎を振り回すだけ振り回して、最後におそろいの“ワニの指”を見せるときのあの無邪気な笑顔は可愛かったわ~。姉のアニーと再会したときのテンションの高さもすごい。本当にどうしようもない弟なんだけどどこか憎めない、みたいな感じ。
弾丸ロスとの悪巧みシーンでのグリムズビーはどこか危うい。悪事に関わっている自覚があるのかないのか微妙なところで、金之助もどう対応していいか分からなくなる。警部にグリムズビーのことを密告しなかったことを知り、嬉しさのあまり抱き上げてグルグル回しているのには笑ったなぁ~。なんとも軽やかに萬斎さんが回されてたよ(笑)。
最後に姉に究極の頼み事をしにやってくるグリムズビー。ついには殺されるかもしれないところまでいってしまい万事休すな状態になってしまうわけですが・・・そのあたりの緊迫感をもう少し丁寧に演じてほしかったかなぁ。なんだかただテンション高くまくしたててた印象がけっこう強いので(汗)。

浅野和之さん
以前から巧い役者さんだなぁとは思っていましたが、今回ほどすごいと思ったことはありません!!1人11役だけでもすごいのに、そのキャラクターすべてが見事に演じ分けされていて一人として同じ人物には思えなかったんですよ。しかも早替えすることが多かった中であの見事な変わりよう!三谷さんは浅野さんに全幅の信頼を置いてこの役を任せたんだろうなと思います。そのキャラクターたちについて少々。

ハロルド
金之助が下宿した家の主人で気さくな人物。大工仕事が得意で金之助ともフレンドリーに接してくれる優しいおじさん。しかし、愛犬の死をきっかけに奥さんとの生活に耐え切れずに家出をしてしまう。浅野さんが演じた11役の中で一番まともな人物だったかも。

サラ
ハロルドの奥さん。いかにも厳格な婦人といったイメージでいつも口調が厳しい。アニーにもいつも厳しく当っていた。しかし夫のハロルドが家出をしてしまったことで「なぜ自分の愛が伝わらなかったのか」と人間的な一面を出す。この時のサラさんはなんだかとても切なかった。

ケイト
サラの妹で浅野さんが演じた11役の中で最もぶっとびキャラだった人物(笑)。厚化粧で色目を使って金之助に迫ってくる一面も。顔をベッタリ金之助に擦り付けて服を脱がそうとまでしてくる大胆さに演じてる萬斎さんも思わず素が出てしまうほどだった(笑)。クライマックスでもう一度出てくる時のブットびな登場の仕方も笑えましたねぇ。どんだけアクティブなの!?みたいな(笑)。

クレイグ
金之助の英語の先生。惣太郎が「ハゲ先生」って思わず口にしてしまってもそれに対してあまり反応しない(シュンとした惣太郎@洋ちゃんが可愛かった 笑)。常識人のように見えて実は差別主義でもあり、アニーの出身を聞くと彼女の持ってきた物には手を触れなかった。

牧師
クレイグ先生が紹介した人物。金之助に会いに来たものの、好奇の目で見つめバカにしたような態度を取り彼を傷つける

貴婦人
牧師と一緒に金之助を訪ねてくる。浅野さんの早替えが見事!牧師が階段の下に降りていったすぐあとに昇ってくる。彼女はただ金之助を見つめて可笑しそうに笑うのみ。まともに接しようとしない態度に金之助は深く傷ついてしまう。彼女は惣太郎の一喝により部屋を後にする。

ビクトリア女王
ビクトリア女王が亡くなり葬儀があった日、金之助の妄想の中に登場。いまだにイギリスでの身の処し方に悩んでいる金之助に「あなたは何をしにやってきたのですか」と訪ねてくる。このビクトリア女王、膝丈くらいの背なんですが…浅野さんが膝を折って出てきてビックリ(笑)。場面が変わると膝歩きから急いで駆け足になってそのネタばらしが見える演出になってるのが面白かった(笑)。

警部
極悪人の弾丸ロスがグリムズビーとつるんでいる情報をキャッチして金之助のもとへ注意するようにやってくる。名探偵ホームズのような格好だった。

弾丸ロス
せむし男のような風貌の弾丸ロス。出っ歯で悪事をまくし立てている。居合わせた惣太郎を縛り上げたり銃を見せびらかしたりとかなーり危険な男。浅野さんは短時間の間に警部と弾丸ロスをいったり来たりしてて、とにかく忙しそうだった(笑)。そんな中でも演じわけがちゃんとできていたのは見事としかいいようがありません。

故ミスター・ジャック
ハロルドが飼っていた犬。口が臭いと周りから言われていたもののアニーやハロルドからは可愛がられていた。そんな彼が死んでしばらくした時、孤独と戦う金之助の前に彼の妄想の中で現れる。まさか犬までやるとは!墓の上にはドクダミが生えていると言うことで、ちゃんと頭の上に一厘のドクダミ草が咲いてた(笑)。
そんなミスター・ジャックは金之助に小説を書けばと勧めます。人の話を聞く能力、ユーモアのセンス、それらを持ち合わせているのだからと金之助に語りかけていたのが印象的。

退役軍人
引きこもりになってしまった金之助の部屋の下に住んでいる住人で、耳も遠くかなりの高齢。訪ねてきた惣太郎は彼を新しい管理人だと思ってしまうのですが、実はただの住人だったという設定が何とも面白かったです。


なぜこんなにたくさんの役柄を一人の役者が演じているのか、それには理由があります。金之助はイギリスに留学しにやってきたものの、会う人みんなが同じ顔に見えてしまう。イギリス人と言うものにある種の恐れを抱いてしまった金之助。そんな彼が見たイギリス人ということで浅野さんが全てを演じることになっているんだなと思います。
浅野さんが演じるイギリス人が登場するたびに、金之助が「また同じ顔だ」と絶望した表情になるシーンが前回よりも顕著に表れているのがとても印象的でした。
いやはや、浅野和之さん、本当にお疲れさまです!!素晴らしい11役演じ分けでした!


本当だったらもう一度観に行きたかったくらい好きな作品になりました。後日WOWOWでの放送もあるらしいのでそのときまで楽しみに…。いい作品が観れて本当によかったです。



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テーマ : 観劇 - ジャンル : 学問・文化・芸術

ストレート演劇 comments(2) -


コメント

Re: 有難うございます♪

ぁーちさん、こんにちは!コメントありがとうございます♪

何度も読んでいただけるなんて感激です!
けっこう力を入れて書いたので(笑)楽しんでいただけて嬉しいです。
浅野さんの早替えは本当に素晴らしかったんですよ!!
11役全てに違う人格が宿ってて…あれはぜひとも映像ででも見ていただきたいです。
DVD出してほしいですよねぇ

有難うございます♪

詳細レポ、何度も読み返して浸らせて貰いました(笑)
萬斎さん、洋ちゃんはもちろんのこと、浅野さんの演技や早替えが観たいです!!
テレビや映画以外の深津さんというのも新鮮ですね

WOWOWはいつ放送なんですかねぇ…DVDはでないのかなぁ?


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(特にミュージカル)
◎基本的にミーハーですw

★特に応援している俳優さん
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★特に応援している舞台俳優さん
片岡愛之助さん、飯田洋輔くん、福井晶一さん、泉見洋平さん、宮川浩さん、畠中洋さん、渡辺正さん、北澤裕輔さん、岡田浩暉さん、石川禅さん、石丸幹二さん、鈴木綜馬さん、光枝明彦さん

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