大鹿村歌舞伎に関わる人々のちょっとおかしいドタバタ劇を描いた映画
『大鹿村騒動記』を見に行ってきました。
この映画は、以前NHKの
『おシャシャのシャン』というドラマに出演していた原田芳雄さんがそれをきっかけに興味を持った
"大鹿村歌舞伎"を題材にした映画を作りたいと熱心に企画を持ち込まれたところからスタートしたそうです。1時間弱のNHKスペシャルドラマで地味だけどなかなか面白い作品だった。田畑智子さんや尾上松也くんが出てたんですよね。
原田さんは歌舞伎に出演する予定だったけどぎっくり腰になっちゃって出演断念したっていう設定だったので、ご自分も舞台の上に立ちたいという想いを強く抱いていらっしゃったのかもしれません。
そんな思い入れの強い作品の完成を見届けるように、
原田芳雄さんは映画公開2日後天国へ旅立たれてしまいました…。この映画には加藤虎ノ介くんが出ると聞いていたので最初から見に行くつもりでいましたが、よもや
原田さんの追悼上映というような形になってしまうとは思いもしませんでした(涙)。
公開1週間前、最後の力を振り絞って舞台挨拶に登場した原田芳雄さん。先日までOAされていたドラマ
『高校生レストラン』で途中降板される前よりもずっと痩せ細ってしまいショックを受けましたが…ご自分の愛された映画に最後まで携われたことに幸せも感じられているようにも見えました。
ご回復をと祈りましたがその願いもかなわずとても哀しかったのですが(涙)最後まで現役を貫かれた原田さんの生き方はカッコイイなとも思えます。
さて、映画の内容は全体的には
大人の喜劇に仕上がっていてとても面白かったです。腹抱えて大笑いするっていう面白さではなくて、何となく見ていて
心がポッと温かくなるような笑いに包まれた作品。
大鹿村歌舞伎の本番を間近に控えたある日、自分の女房と駆け落ちした男が突然一緒に戻ってきて…周囲の人々はテンヤワンヤな状況に巻き込まれていくわけですが、さすがベテラン役者さんが揃っているだけあって会話のテンポもいいし間も絶妙で面白い!撮影期間が約2週間とかなりの短時間だったそうで、そのセリフのやり取りの半分くらいは
アドリブで乗り切ったというのだから驚きです!どこがアドリブなんだか分からなかったし、本当に皆さんそれぞれすごく自然なんですよ。
さらに泥んこになったり、取っ組み合いのケンカになったり、台風の中で暴風に吹き飛ばされそうになっていたりと・・・まぁ、皆さん体張っております!!その姿がなんだかとても滑稽に映って見ているこちらはクスっと笑ってしまうんですよね。必死になればなるほど面白い。その合間合間に
小倉一郎さんの絶妙なボケも混じっていたりして(笑)、これが実にいい味出していました。
一番頑張ってたのは
岸辺一徳さんだったなぁ。原田さんの親友でいながらその奥さんと駆け落ちしちゃって、彼女がアルツハイマーにかかってるって知ってから「返す」なんて言いに戻ってくるどうしようもない男の役だったんですけど(苦笑)、まぁ、全身で演じているというか弾けてるというか、
えっ!?そんな姿まで!!みたいなシーン
(でんでんさんも)もあったりしてwww見応え十分です。
トップが原田さんを筆頭に
岸部さん、石橋蓮司さん、大楠道代さん、さらには三国連太郎さんといった面々なので、バスの運転手役で出演していた
佐藤浩市さんが新人俳優のように見えてしまうというのもこの映画のすごいところだと思います(笑)。村の職員役の
松たか子さんも駆け出しの女優さんみたいだったし、いまや主役を張れる役者に成長した
瑛太くんもデビューしたての新人役者さんみたいだった(笑)。
「つばさ」で知秋を演じてた
冨浦智嗣くんはおそらくこの映画の中で一番の若手だったと思うのですが、かなりいいポジションの役をもらっていてとても頑張っていました。後半になって明かされる彼の秘密の設定、
あぁ、なるほど!と思わず納得です。彼がこの役に抜擢されたことの意味が分かった気がする、みたいな。
そして
加藤虎ノ介くん、映画の宣伝映像が映るたびにチョコチョコと映りこんでいたのですがww思っていたよりもかなりいいポジションで嬉しかったですね。虎ちゃんのこれまでの役柄に比べると、
ビックリするほど普通の青年の設定です。村の職員で会議のシーンでは一人一人に急須でお茶を入れていたりする地味っぷり(笑)。こういう役はかえってものすごく貴重で新鮮に見えます。
さらに、歌舞伎の出演メンバーにも入れてもらっていて…練習風景では大物役者さんの中に混じって自然に動いている姿も!なんかそれだけでもファンとしては
感動ものでしたよ。もっとビックリなのはあの三国さんとガチで絡むシーンがあったこと!家に向かう車の中では歌舞伎のセリフの練習してる声も拾ってもらえてたし、三国さんのお宅
(役柄のねw)の地デジチューナーまで取り付けしてあげてるし!虎ちゃん、すごい経験させてもらってるなぁと。さらには原田さんや佐藤さんとも何度か絡んでいたし…予想外に出番が多くビックリすると同時に嬉しかったです。
歌舞伎シーンでは最初どこに出演していたのか分かりませんでしたが、
「地デジありがとう~」といった大向こうの声と共におひねりが投げ入れられるシーンがあったのでw、あ、これだなと認識(笑)。かなりコミカルなお役でしたw。
こんなすごいメンバーと共演できた虎ちゃん、すごく幸せな現場だったのではないだろうか。とても自然に振舞っている姿がすごく印象的だった。原田芳雄さんの遺作に関われたこと、今後活動していく上で虎ノ介くんの中で大きな意味を成していくのではないかなとふと思いました。
この作品に虎ちゃん呼んでくれてありがとうって言いたくなりましたね。
撮影は昨年の秋に行われたということですが、映画の中で躍動する原田芳雄さんはとても生き生きしていて…
とても病魔に蝕まれている状態だったとは思えませんでした。どの役者さんと絡むときもすごく楽しそうで、半年後のお姿が全く想像できなかった…。
原田さんを取り巻くキャストさんたちは、まるで
家族みたいに映りましたね。みんな原田さんが大好きでこの作品のために集まったと言っても過言ではないようなチムーワークの良さが感じられた。だからこそ、笑いの中に温かさもあるのかなあって…。
"家族"に囲まれている原田さんはとても幸せそうに見えました。今になって思えば、もしかしたらこの作品が映画では遺作になるかもしれないということを心のどこかで感じていらしたのかもしれません…。
念願だったであろう、歌舞伎のシーンの熱演は素晴らしかった。この世にもう原田さんがいらっしゃらないことが信じられないくらいの迫力で・・・クライマックスシーンでは思わず涙がこぼれてしまいました(涙)。
この映画は1000円で見れます。上映館数も今後増えてくるかもしれませんので、お近くの方はぜひご覧になってはいかがでしょうか。
改めまして、原田芳雄さんのご冥福を心からお祈りしたいと思います…。ちなみに、戦前から戦後にかけての大鹿村歌舞伎を扱った映画が片岡愛之助さんが出演していた
『Beauty』です。
『大鹿村騒動記』からすると多少予算の厳しさみたいなものが感じられてしまうのですが(苦笑)とても感動的なストーリーになっています。村歌舞伎のリアルさからすれば『大鹿村~』のほうが近いかもしれませんけどね
(『Beauty』は愛之助さんや孝太郎さんといった本職の役者さんが演じてるのでw)。
DVD化しているのでよかったら是非。
私はこの映画で大鹿村の存在を知って公開前に一度訪れたことがあります。とても美しい村で感動しました。『大鹿村~』を見てまた行ってみたくなりました。
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